眠れない夜の散歩道

ベトナム帰りの50代男が綴る東京生活

100%の食べ物

ランチにサンドイッチを食べ、店を出て事務所に戻る途中でインド料理屋の前を通りかかった。

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その店から漏れてくるカレーの匂いを嗅いで、ああ、カレー食べたいなと思った。
すでにお腹はくちいにもかかわらずである。

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口の中にはなんとなく甘いものが残っている感じだ。デザートとしてついていたミニコーヒーゼリー(生クリームのせ)のせいだろうか。
おそらくそのために、口が辛いものを欲したのだ。また、ご飯も食べたかった。

このとき、ふと昔読んだ「ドラえもん」を思い出した。
完全な食事を上げると言って豆粒のようなものをドラえもんが取り出す。のび太がそれを口に入れると、たちまち幸福感に包まれ、これ以外のものはほしくない完璧な食べ物だと絶賛した。(うろ覚えなので細かいところは違っているかも)

今思えば、これってどうなんだろう?
甘いものを食べたら辛いものが食べたくなったり、パンを食べたらご飯を食べたくなったりと、人の味覚はわがままだ。
それに加えて、食事は味覚だけで楽しむものではない。食感や匂い、見た目などもそれぞれの料理の大きな魅力だ。
仮に味覚は食べる人を100%満足させることができたとしても、あんなただの丸い粒では視覚を楽しませることはできないし、香りもなさそうだったから嗅覚も満足させられないだろう。
どんなに未来の科学の粋を集めて作り上げたとしても、100%完璧な食べ物などありえないと思われる。

いや、待てよ?
今思いついたのだが、一つだけ考えられることがあるじゃないか。
それは、あの丸い粒が強力な麻薬だった場合だ。
食べた途端にものすごい幻覚が襲ってきて、五感をすべて満足させるような刺激がもたらされるのかもしれない。それならたしかに100%の食べ物足りうるだろう。

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あれを口にした直後ののび太の恍惚とした表情からして、十分ありえそうだ。
なんとまあ、ドラえもんってヤバイお話だったのね。

追記
がんばってググった結果、ドラえもんの話がどんなものだったのかだいたい判明した。それは私の記憶とはかなり違っていた。のび太が食べたのはドラえもんが取り出した完璧な食べ物ではなく、「自動販売タイムマシン」で買った「100年後のお菓子」だった。
そして、のび太は「これ以外のものはほしくない完璧な食べ物だ」などとは言っておらず、「うまい!!」「こんなあじは初めてだ!」「一つぶごとにジーンと心にしみるあじだ。」と言っていた。

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トホホ…。
でも、100%の食べ物などありえないという今回の記事の趣旨には影響しないので、そのままにしておく。
ここでまた、村上春樹の「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」を思い出したが、それについて述べる場ではここはない。

20億円損した話

先日、夜7時過ぎに事務所を出て駅に向かって歩いていると、大きめのスーツケースを紐でくくったものを引きずり、もう一つのスーツケースを転がしながら車道側から歩道に上がってきた50代と思われる女性がいた。
紐で引っ張っているスーツケースは車輪で転がっているのではなく、横倒しになって地面を擦っていた。

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なんだか変わった人だなあと思いながら通り過ぎようとしたら、声を掛けられた。
「ちょっとお兄さん」
お兄さんという年でもないが、さほど年は変わらないので、呼びかけとしては妥当か。
「はい? 何でしょうか?」
「ちょっとどう説明したらわかってもらえるかわからないんだけど」
何を言われるのか少し警戒しながらもいつの間にか話を聞く態勢に入っている。
「20万でも30万でも渡してもらえると」
ん? どういうこと?

ここで遥か40年近く前の出来事を思い出した。私が高校生のときのこと、夜自転車で走っていたらおじさんに呼び止められた。年齢だの容姿だのはまるで覚えていない。ただおじさんであったことだけが確かだ。だれかに手紙か何かを渡してくれというようなことを言われた。あるいは、渡したいんで呼び出してくれだったかな?
まったく知らない人間のためにどうして自分がそんなことをしなきゃならないのかわからないし、その人が悪人でないという保証もないので、断ってすぐに自転車で走り去った。

あのときのおじさんのようにこのおばさんもだれかにお金を渡したいんだろうか?
でもどうして人に頼むんだ?
「ちょっと意味がわからなんですが」
と言うと、
「お金がないのよ」
えっ? それってどういうこと?
「だからお金を渡してもらえない?」
「いや。意味がわからないんですが」
「この寒さをしのぐ場所もないの」
「それじゃ、交番に行ったらどうですか?」
「お兄さんがお金をくれないのに警察がお金をくれるわけないでしょ」
いやいや。ちょっと待って。なんで5秒前までまったくその存在すら知らなかった私があなたに20万円だか30万円だかを上げなきゃなんないのよ。
ヤバイなあ。どうやってこの場から脱出したらいいんだろう。そんなことを考え始めたとき、
「無理?」
と追撃される。
「無理ですね」
そう答えると、意外なことに彼女はあっさりその場から歩き去っていった。スーツケースを引きずりながら。

いったいあれは何だったのだろうか?
今となって考えてみると、もしかしたら彼女は超大金持ちで、人を試していたのかもしれない。見も知らない人間から困っているからお金をくれといきなり言われて喜んで助けるような人を探していたのかも。
もしもあのとき「わかりました。20万円差し上げます」と言って、コンビニのATMで下ろした1万円札20枚を彼女に渡していたら、私の運命は変わっていたのかもしれない。
「なんと心根の優しい方。感動しました。今の世の中にもあなたのような方がいるんですね。どこのだれかもわからない私に20万円を差し出そうとするあなたのお気持ちに対して、20億円を差し上げます。どうか受け取ってください」
そう言って、ポケットから取り出した小切手帳に20億円と記入して私に手渡したかもしれない。いや、きっとそうだ。
20万円をケチったばっかりに20億円を失ってしまったのか、私は………。

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ファミマベーカリーの「あんバターフランス」

今ハマっているのが、ファミマベーカリーの「あんバターフランス」だ。
丸いフランスパンの真ん中に切れ目が入っていて、その下の方にバター入りマーガリンが、上につぶあんが載っている。

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フランスパンといっても柔らかいので、固いパンが嫌いな人でもまったく問題ない。
あんこなんですが、量はたっぷり、お味は甘すぎず絶妙なおいしさ。あんこ好きにはたまらない。

http://www.family.co.jp/goods/bread/1532418.htmlwww.family.co.jp

こちらの方が何枚もの写真入りで詳しく食レポしています。

ameblo.jp


お値段は税込み145円とリーゾナブル。
問題はカロリーが304kcalあることかな。
脂肪1gが9kcalなので、304kcalはおよそ33gの脂肪に相当する。
これをどう考えるべきか……。

ところで、この数字は他のコンビニパンと比べてどの程度のものなのだろうか?
ファミマの「あんバターフランス」の前にハマっていたセブンイレブンのしっとりショコラブレッドを見てみよう。

mognavi.jp


326kcal
「あんバターフランス」よりも高カロリーだ。
チョコレートがたっぷり使われているので、まあ当然といえば当然かな。

さらにもう一つ、以前ハマっていたセブンイレブンで売っているタカキベーカリーの石窯くるみパンはどうか?

mognavi.jp

これは395kcalと、意外なことに「あんバターフランス」よりもかなり多い。
もともとくるみはカロリーが高いので仕方がないところか。とはいえ、くるみは高カロリーである一方、オメガ3脂肪酸ポリフェノールメラトニンなどいかにも身体に良さそうな栄養素を豊富に含んでいるので、カロリーが高いからダメと単純に切って捨てるのはもったいない。

www.californiakurumi.jp

それはそれとして、最近ハマった3種類のコンビニパンの中ではこの「あんバターフランス」が最もカロリーが低いということがわかった。

ちなみに、茶碗にふつうに盛ったご飯(140g)が235kcalだそうです。

cookpad.com

うーむ……食べ盛りの子どもや運動選手ならともかく、お腹が気になる人はやはり控えたほうがいいのかな。
間食をするために食事のカロリーを減らすなんてことをするのは本末転倒で、身体には良くないからね。

とはいえ、やはり美味しいものはどうしても食べたくなってしまうので、このところ毎日1個は必ず食べている私でした。

五十肩つらい……

五十肩になった。

3カ月くらい前、ジムでラットマシンプルダウンをしていると、右肩に軽い痛みを覚えた。体の一部がちょっと痛くなるのはよくあることなので、そのときは特に気にしていなかった。
しかし、1週間たっても痛みは引かず、むしろ増していた。
運動中にひねったとかどこかにぶつけたとか、痛みの原因として思い当たるようなことは何もない。

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おかしいなと思いながらネットで検索してみると、なんと! 五十肩の症状にピッタリ当てはまるではないか。
四十代で四十肩にならなかったので、まさか自分が五十肩になるなんて思ってもいなかった。しかし同時に、放っておいても1年以内には治るということを知ってホッとした。

ジムでの運動では、ラットマシンプルダウン以外に、ベンチプレスとスクワットができない。ベンチプレスはともかくスクワットに肩がどう関係するんだと言われるかもしれないが、肩に担いだバーベルを掴むと痛くて耐えられないのだ。
2~3カ月かけて症状は次第に悪化してきている。ここ1週間ほどは良くも悪くもならず安定しているが、例えばズボンのお尻のポケットに入ったハンカチを取り出すという動作をするのは苦痛だ。
水平より上に右腕を挙げられないかというとそんなことはないのだが、真っ直ぐ上に伸ばすことはできない。
これがあと半年かそれ以上続くのかと思うと憂鬱だが、いつかは治るのだと信じて待つしかない。

整体が効くとか温泉がいいとかステロイド注射が効果的だとかいう話も聞くが、とりあえず放置することにする。

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身体の不調は基本的にはほっときゃ治るというのが私の考え方だ。
数年前には膝を深く曲げるとひどく痛むことがあって、このまま一生正座ができなくなってしまうのかと心配したが、2週間もしないうちに治ってしまった。
1週間ほど前には右足親指の付け根が痛くなり、すわ痛風かと焦ったが、2~3日で痛みは消えてなくなった。
そういえば、これも数年前に左手の中指と薬指がくっつけられなくなったことがある。どこかがおかしくなってしまったのかと不安になったものの、いつの間にか治っていた。

考えてみれば、去年の冬に生まれた初めてかかったインフルエンザだって、一応医者に診てもらいタミフルを処方されて飲んだけれど、あれを飲んだからといってせいぜい半日回復が早まる程度の効き目しかないのだ。水分と栄養をとってただ寝ているだけでもちゃんと治る。

というわけで五十肩も放っておくことにするが、日常生活に支障が出るしジムでの運動が制限されるので、1日でも早く治ってほしいものだ。

セブンイレブンでしっとりショコラブレッドを買おうとしたら……

先日、事務所の近くのセブンイレブンでしっとりショコラブレッドを買おうとしたら、賞味期限切れなので販売できませんとアルバイトの中国人女性に言われてしまった。見ると、賞味期限がその日の午後4時とある。そのときは午後2時過ぎだったので、「でもまだ大丈夫でしょ?」と聞いたら、賞味期限の2時間前になったら販売できないのだという。
しっとりショコラブレッドが置いてあった棚に戻ってみると、他に同じものは残っていなかった。あれが最後のしっとりショコラブレッドなのだ。

- セブン-イレブン~近くて便利~

賞味期限なんて別にどうでもいいんだけどなあ。大晦日には賞味期限を1年半過ぎた乾そばを茹でて食べたくらいだし。
もちろんそれで腹を壊したりすることはなかった。
でも、それが決まりだというのなら、無理を言ってもアルバイトの彼女が困るだけだ。残念だけどあきらめてくるみパンを買うことにする。

しかし……あのしっとりショコラブレッドはどうなってしまうのだろう? 売ることができないとなれば、結局は捨てることになるんだろうなあ。
あまりにももったいない。賞味期限2時間前になっても売れ残っている食品なんてこの店の中には他にもたくさんあるだろうし、それが日本中のセブンイレブンで、というか日本中のコンビニでとなると、いったいどれだけの量になるのか見当もつかない。

経済効率的にこの方法がベストだとセブンイレブンが、というかコンビニ各社が、というか食品業界が考えているんだろうけれど、本当にこれでいいのだろうか?
こんなことをしていたら罰が当たるんじゃないかと心配になってくる。

ベトナムの交通マナーは今どうなっているのか?

技能実習生送り出し機関に関する記事の中で、バイクを運転していて赤信号で止まっていたら後ろのバイクが次々に追い越していき、追い抜きざまに罵られたという体験について語ったことを書いた。

sieuanhhung.hatenablog.com

あれはもう20年くらい前の話なので、今ではさすがにそんなことはないだろうと思っていた。
しかし、どうもそうではないようだ。

今日12月24日付のベトナムのネット新聞VnExpressにこんな記事が掲載されていた。

vnexpress.net

赤信号で止まったら、「田舎もんが! だれもいないのに止まっていやがる」と罵られたと文化・スポーツ・観光省の Trịnh Thị Thủy副大臣が語っている。
交通警察局副局長のĐỗ Thanh Bình氏によれば、交差点に警察官が立っていなければみんな信号を守らない。

やれやれ。
何も変わっていないじゃないか。

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Photo by Artem Bali from Pexels

技能実習生送り出し機関の教育再考

以前の記事でベトナムの送り出し機関の教育についてやや批判的に書いた。
sieuanhhung.hatenablog.com

大の大人に対して「躾」をするなんていうのは傲慢ではないかと。
しかし、矛盾するようだが、そういうことをする側の気持ちも私にはわかるのだ。

ベトナムに住んだことがあるなら、騒音に対するベトナム人の鈍感さに悩まされたことのない人はいないだろう。
私はベトナムのド田舎のローカルホテルで数年生活した経験がある。
そのとき最もストレスとなったのは騒音だった。
都会からは100キロ以上離れており、観光地でもないので、ホテルの宿泊客はほとんどがベトナム人だ。
団体客がやってきて、いくつかの部屋に分散して宿泊する。
数人がひと部屋に集まって話をしている。
それはまだいい。
だれかの携帯に電話がかかってくる。
すると、電話を受けた人間は部屋を出て廊下で話をする。
他の人の話の邪魔にならないようにしようという心遣いだ。
素晴らしいではないか。
ところが、隣の部屋にいる私に対しては彼はまったく心遣いをしてくれないのだ。
携帯電話の向こう側にいるだれかと延々と大声で話し続ける。
廊下では声がよく響くうえ、ローカルホテルの部屋は防音仕様ではない。

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また、部屋のドアを開けっぱなしにして別の部屋の人間同士で会話することもある。それがときには2時間も3時間も続くのだ。
部屋の出入りのときは、思い切り力をこめてドアを閉める。当然のことながらこの音も大変よく響く。

これは珍しいことではなく、むしろこういったことが日常だった。
当たり前だけれど、こういう人に自分の隣の部屋に住んでほしくない。

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今日本に来ている技能実習生、そしてこれから日本に来る技能実習生たちは、もともとこの程度もしくはそれ以下のレベルのモラルしか持ち合わせていない人間が多い。

騒音に関することにとどまらず、交通ルールを守る、法律に従うといった、ごく当たり前のことができない人がたくさんいる。
それを日本に送り込んで問題を起こさないようにするためには、軍隊式の生活で「躾」をすることもやむを得ないのかもしれないとも思えてくる。

コーヒー断ちと紅茶の話

コーヒー断ちをして一つ残念に思っていることがある。
それは、暇つぶしにカフェに立ち寄るというのがしにくくなったこと。カフェでコーヒーを飲みながら本を読んだり、単に時間をつぶしたりするのはごく当たり前のことだった。
コーヒーを飲めなくなっても、カフェなら必ず紅茶は置いてあるからそれを飲めばいいだけだろうと言われるかもしれない。それはそうなのだが、紅茶の場合、ティーバッグで出てくるのが気に入らない。ティーバッグの紅茶なら自宅で飲んでも味が変わらないではないか。

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コーヒーの場合は、まあよっぽどの凝り性で豆から買って挽いて飲むという人なら別かもしれないが、カフェで飲むコーヒーの方が家で飲むのよりずっとうまい。だからカフェでコーヒーを飲むことに抵抗はない。
けれども、ティーバッグの紅茶を店で飲むのはすごくお金がもったいなく感じる。
そのため、何かを食べるついでに飲むという場合以外はカフェに立ち寄ることがほとんどなくなった。
たしかにお金の節約にはなるが、楽しみを一つ失ったような気がする。

ここまで書いて思い出したことがある。
私が大学生の頃だから、今から30年以上前の話だ。
そのころ住んでいた吉祥寺の北口、駅から10分ほど歩いたあたりに紅茶専門店があった。若い女性が一人でやっている店だった。紅茶専門店だけあって、紅茶はティーバッグではなく、ポットで出てきた。種類も豊富だった。
その頃からコーヒー党だった私がなぜかその店を気に入って、ときどき通っていた。

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……はずなのだ。しかし、今吉祥寺北口の様子を思い浮かべてみると、いったいあの店がどこにあったのか、まるで思い出せない。
サンロードを北に歩き、バウスシアターを通り過ぎて突き当たった通り沿いだったろうか? なんだかしっくりこない。
もちろん今では残っていないだろう。

それでも一つだけ確実に言えることがある。紅茶を飲みに店に通ったことが自分にもかつてあったのだ。

技能実習生送り出し機関訪問記~その2

この送り出し機関の場合、寮費は半年で1000万ドン、食費は1日5万ドンとのこと。
送り出し機関が技能実習生から徴収できる法定の金額は3600USD。それに加えて日本語学習の学費がたしか590万ドンだったはずだ。
寮費1000万ドンの中にこの590万ドンが含まれているのか確認するのを忘れてしまったが、おそらく含まれているものと思われる。
半年分の食費が900万ドンだから、合計すると50万円弱くらいかかる計算になる。

もしブローカーが介在していると、一人につき1000USDほどの紹介料を取られるため、2人のブローカーが関係していれば合わせて70万円ほどになる。

機関の担当者の説明によれば、現在は各地方で直接採用活動を行うことでブローカーを排しているとのことだ。それによって技能実習生が抱える借金の額は以前より減り、失踪者も減少したという。
とはいえ、ほとんどの技能実習生が貧しい農村の出身であることを考えると、50万円~70万円はほぼ全額が借金だと考えていいだろう。家族が田んぼや畑を抵当に入れて借りたお金かもしれない。

午後には別の送り出し機関の職業訓練センターを訪問する。と言っても、午前に訪問した会社のグループ会社だ。
センターは、ホテルから車で45分ほど走った場所にある。建物は平屋で広いオープンスペースになっている。ここで、塗装、型枠、縫製、建設、ビルクリーニング、食品加工、左官、溶接その他の職業訓練を行っている。
私が訪問した日には、日本から10社が訪れて候補者の面接を行なっていた。建設の実技試験として足場の組み立てと解体をやらせている会社もあった。

ここでは例えば5人ほしいと日本の会社から連絡を受けると、募集をかけ、応募者の中から送り出し機関が15名ほどを選抜する。15人は寮に入り、1週間ほどのトレーニングを経て日本企業の面接を受ける。そこで採用が決まった5人は引き続き職業訓練を受け、不採用となった10人はさようならとなる。この1週間については寮費や学費は無料なのだそうだ。
ここでの訓練期間は、日本語と職業技術を両方学ぶため、6カ月~8カ月になるという。

この職業訓練センターでは中を見て回っただけで、技能実習生と話をすることはできなかった。

着いたときには4~5台だった駐車場の車が帰る頃には12台以上になっていて、入りきらず敷地の外の路上に駐車している車まであるほどだった。

ホーチミンのタクシードライバー

ホーチミンでタクシーに乗ったときのこと。

ホーチミンでは中心部からかなり離れたBình Chánh区という地区のホテルに宿泊した。そこから中心部である1区まで行くのに、ちょっとわけあってGrabではなくタクシーを使った。

ドンコイ通りとレタントン通りの角までとベトナム語で伝えたら、運転手がひどく驚いて、「どうしてベトナム語ができるんだ? ベトナムに住んでいたのか?」と聞いてきた。
かなり長く住んでいたと答えると、「ベトナムは好きか?」「ベトナム人についてどう思うか?」と質問が飛んでくる。
運転手は50代と思われる男性で、北の言葉を話す。

ベトナムは好きだし、ベトナム人は開けっぴろげで客好きだ。ただ、規律を守るという点について言えば日本人より落ちると思う。と当たり障りのない回答をする。
すると、「いや。あんたは本当のことを言っていない」「日本人は素晴らしい。第2次世界大戦で焼け野原になったのに、勤勉さによって経済大国になった。大地震津波でひどい損害を受けてもすごいスピードで立ち直った」
「あの津波の後、日本では略奪が起きず、みんな行列を作っていた」と手放しで日本をほめる。
「いや。たしかにハイチで天災が起きたときのような略奪はなかったけど、盗みを働くヤツはいたんだよ」と、一応言っておく。

「日本は世界中の尊敬を受けている」と言うので、「ベトナムもすごいよ。世界で唯一アメリカに戦争で勝った国じゃないか」とベトナムをほめた。
「そうだ。けれど、そのためにベトナムがどれだけの犠牲を払ったか知っているかい?」
「確かに多くの人が死んだよね。200万人だか300万人だか……」
「違う。本当は600万人死んでるんだ。表立っては言えないけれど」

ファン・ボイ・チャウの東遊(ドンズー)運動などにも詳しく、この運転手はインテリだとしか思えない。
「前は違う仕事をしていたんだ」と言ったが、何をしていたのかは教えてくれなかった。

ベトナムが好きだと言ってくれてうれしい。できればベトナムで働いてほしいし、日本とベトナムの関係をよりよくするようなことをしてほしい」
「今日はお客さんと話ができてよかった」

こうしておよそ30分のドライブは終わった。

技能実習生送り出し機関訪問記~その1

ハノイ技能実習生の送り出し機関を視察した。

事務所を訪ね、会社のちょっと偉い人たちとお話したあと、日本語教育センターを訪ねた。事務所はハノイの街なかにあるが、日本語教育センターはそこから車で30分以上走った郊外にある。

案内してくれた方は、「この敷地内は日本です」とおっしゃる。未来の技能実習生たちはこの施設の中で24時間日本式の生活を送っているということらしい。

ハノイの街角の写真
ハノイの街角

彼らは深々とお辞儀をする。女性はお腹のあたりに両手を添えて、男性は両脇に手をおろして。
それが日本人を戯画化した姿であるように思われてならない。特別な場合でなければ日本人があんなに深くおじぎをすることはないし、女性がお腹に両手を当ててお辞儀をするというのも、一部の接客業くらいではないのか?
何十年か前のハリウッド映画に出てくる日本人の姿に重なる。

校舎には様々な掲示がなされており、その中には5Sについてのものもあった。
5Sとは、次の5つのことだ。

・整理(せいり、Sàng lọc)
・整頓(せいとん、Sắp xếp)
・清掃(せいそう、Sạch sẽ)
・清潔(せいけつ、Săn sóc)
・躾(しつけ、Sẵn sàng)

これは何も技能実習生の教育センターだけに見られるものではなく、日本の工場でも海外の日系企業でもふつうに展開されている職場の環境維持活動だ。

ベトナム語でもSから始まる単語を使って強引に5Sにしている。
Sạch sẽは意味からすれば「清潔」に近いのだが、「清掃」を表すベトナム語がdọn dẹp、quét tướcなどでSから始まらないため、Sạch sẽを「清掃」に持っていき、「心をこめて面倒を見る」という意味のSăn sócを無理やり「清潔」に当てたのだろう。

それはそれとして、5Sを見るときいつも気になるのは最後の「躾」という言葉だ。
躾というのはペットをはじめとする動物の調教や訓練に使う言葉なのではないか? 人間に対して使うのは子どもに生活習慣や礼儀作法を身に付けさせるときに限られるはずだ。
大の大人を相手に躾をするというのはあまりにも傲慢ではないだろうか。

この日本語教育センターを批判しているわけではない。どこの技能実習生研修施設でも、そしてどこの日系企業の工場でも同じことが行われている。

約300人がこの敷地内で寮生活を送っている。3~5カ月日本語を勉強したのち、技能実習生として彼らは日本に渡る。
時間割表を見ると、朝5時半から夜23時まで予定がびっしり詰まっている。授業は1日6コマ(1コマ約1時間)で、そのうち5コマが日本語のクラス。それ以外は日本の文化や生活を教えるクラスだ。

自動販売機の写真
ベトナムではまだ数少ない自動販売

日本語のクラスで話をしてくださいと言われ、彼らの前に立つ。
ひとクラスは15人程度。
何か質問をということで、彼らの出身地を尋ねた。
ハイズーン省、フンイエン省フート省などの北部出身者が大半で、ゲアン省など中部出身者が少しいる。

今度は反対に彼らの方からの質問を受ける。
ベトナムの交通についてどう思いますか?」
ああ、これは「バイクが多くて驚いた」「道を渡るのが怖い」という答えを期待しているのだろうなあ。
しかし、ベトナムに来たばかりの外国人ならともかく、10年以上ベトナムに住んでいた私には今さらそんな答えをすることはできない。

「バイクを運転中、赤信号だったので交差点の先頭で信号待ちをしていました。交差する道路のバイクが途切れると、まだ赤信号なのに後ろに並んでいたバイクが私のバイクを追い越して信号無視して交差点を渡っていきました。それだけでなく、追い越しざまに私を罵っていく人もいました」
と話した。けれど、日本語の勉強を始めて数カ月の彼らには理解できないようだ。そこでベトナム語で説明したのだが、考えてみれば日本語の授業ではないか。生徒も先生も日本人と日本語で会話することを期待していたというのに、バカなことをしてしまった。後で反省する。

(つづく)

※写真はいずれも送り出し機関とは無関係です。

ベトナム航空はなかなかいいし、Webチェックインは使える

今回のベトナム旅行では、Webチェックインを利用した。ベトナム航空の場合、出発予定時刻の24時間前からWebでチェックインができるようになる。

Webチェックインのやり方についてはこのへんのブログに詳しい。
mayowazunoru.com

www.aikotobahalalala.com


Webチェックインをするとどんないいことがあるのかというと、空港でWebチェックイン済みの人専用のカウンターを利用できるのだ。一般のエコノミークラスカウンターはほぼ常に長い行列ができている。それに対して、Webチェックインカウンターはほんの数人しか並んでいない。これは大きなストレス軽減となる。

また、Webチェックイン時に座席も選ぶことができる。空港のカウンターでは窓側から通路側か真ん中かしか選べないが、Webチェックインならその時点で空いている席ならどこでも好きな所を指定できる。

Webチェックインが終わると、自分のメールアドレス宛にモバイル搭乗券、ウェブチェックイン搭乗券が送られてくる。これを印刷するかスマホで表示してカウンターで提示することになっているようだが、実際にはそんな必要はなかった。

ベトナム航空の飛行機の写真

今回の旅で、ベトナム航空には非常にいい印象を持った。
機体は新しくキレイでエンターテインメント用スクリーンも比較的大きい。エコノミーなので機内食の味はほめられたものではないが、食べられないほどひどくはない。他の航空会社ではたいてい有料になるアルコールも無料らしい(私は飲まないが)。
飛行も離着陸も非常にスムースだったし、ディレイもほとんどなし。
着陸の少し前になるとスクリーンに流れるベトナム紹介用動画もよくできていた。

料金もリーズナブルだったから、頻繁にベトナムに行くようならベトナム航空のマイレージに申し込みたいところだ。

www.vietnamairlines.com